「住宅」に意欲のトヨタ章一郎
燃料電池の「意外な狙い」
2010年10月号
トヨタ自動車が系列自動車部品メーカー大手のアイシン精機(アイシン)などと共同で、家庭用定置式燃料電池の実用化に向けて動き出した。トヨタはかつて次世代エネルギー車用に燃料電池車(FCEV)の開発を進めていた。しかし「車両の燃費に加えて燃料の精製や輸送、車への供給までを算入したwell to wheel(油井から車輪まで)のトータルなエネルギー効率では、ハイブリッド車(HV)に劣る」(トヨタの開発責任者)として開発を中断している。なぜ、ここにきて家庭用の定置式燃料電池へ方向転換したのか? 実はトヨタのFCEV開発には、当初から別のミッションが課せられていたのだ。
エコ住宅の切り札に
「一体、どうなっているんだ!」。二〇〇〇年代初頭、大手電機メーカー役員は次世代環境機器の展示会場で、自社の定置式燃料電池開発担当者を叱り飛ばした。「ウチよりも、はるかに高性能でコンパクトな燃料電池が展示されているぞ!」。担当者は役員の話に首をかしげた。「ライバルメーカーの定置式燃料電池はすべてチェック済みで、性能やサイ・・・