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中国で進む「毛沢東回帰」の真相

「軍権掌握」狙う習近平の野望

2010年10月号

 毛沢東死去から三十四周年の九月九日、北京の毛主席記念堂には午前中の公開時間中に三万人が参拝に訪れた。その中には毛沢東の唯一の嫡孫である毛新宇氏(四十歳)もいた。毎年、毛沢東の命日と誕生日(十二月二十六日)に、家族とともに記念堂を訪れてきたが、今年は内外メディアの注目を一身に集めた。この七月に、全軍最年少の少将になったからだ。
 毛新宇氏は九日午後、中国共産党機関紙「人民日報」のウェブサイト「人民網」のゲストに招かれ、ネチズンたちと交流した。彼は生前の毛沢東に会ったことはないが、今回の少将昇進について「祖父の七光り」と率直に認めた上で、毛沢東を「史上最大の軍事戦略家、天才」などと賛美し続けた。人民日報内部では、この企画をめぐって賛否両論が起こったという。ある批判派の記者は言う。
「改革開放の評価に関し、党指導部内の意見対立が顕在化している中で、人民日報が一方的に毛沢東賛美を助長していいのか。毛新宇は政治への野心ものぞかせており、左派に利用される恐れがある」
 この日、中国各地で毛沢東を追悼する民間の活動が行われ、毛沢東時代を懐かしみ、毛路線への回帰を・・・