《クローズ・アップ》永守重信(日本電産社長)
巧みなM&Aで異彩放つ
2010年9月号
「モーターの世界帝国」。日本電産社長の永守重信の頭にあるのはこの一念だろう。パソコンなどに組み込むハードディスクドライブ用の精密小型モーターからワイパー向けなど車載用、冷蔵庫など家電製品向けまで生産するモーターの幅の広さは群を抜くが、今回、米国のエマソン・エレクトリックから中型・大型モーターの事業を買収し、「モーターなら何でも供給できる総合メーカー」に一歩近づいた。日本の大手製造業が積極性や独自性を弱めて失速するなかで、永守が君臨する日本電産グループの強さは異彩を放っている。
日本電産は一九七三年に永守が京都のプレハブ小屋で創業して以来、三十七年間で売り上げ五千八百七十四億円(二〇一〇年三月期)、経常利益七百五十億円の企業にまで成長した。その急成長はM&A(合併・買収)と切り離すことはできない。国内では八九年の信濃特機に始まり、コパル電子、三協精機製作所、日本サーボなど特徴のある技術を持つ中堅、中小企業を次々買収し、海外でも仏ヴァレオの車載用モーター事業などを傘下に収めた。エマソンは三十件目で、金額では過去最大。永守はそのすべてで対象企業を選び、交渉の前線に立って、まとめ上・・・
日本電産は一九七三年に永守が京都のプレハブ小屋で創業して以来、三十七年間で売り上げ五千八百七十四億円(二〇一〇年三月期)、経常利益七百五十億円の企業にまで成長した。その急成長はM&A(合併・買収)と切り離すことはできない。国内では八九年の信濃特機に始まり、コパル電子、三協精機製作所、日本サーボなど特徴のある技術を持つ中堅、中小企業を次々買収し、海外でも仏ヴァレオの車載用モーター事業などを傘下に収めた。エマソンは三十件目で、金額では過去最大。永守はそのすべてで対象企業を選び、交渉の前線に立って、まとめ上・・・