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経済

「円高攻勢」に立ち尽くす日本

政・財・民とも打つ手なし

2010年9月号

「何て言ったって、今回の円買いはものすごい援護射撃があるのが強いよ。中国だよ、中国」
 ヘッジファンドの運用担当者はこう言って、ウフフと笑った。ウォールストリート・ジャーナルが八月十日付で「中国が円高を加速させる」と報じた日の電話である。
 中国は円の積み増しを加速させている。今年一~六月の日本国債投資は一兆七千億円で、過去五年間に行った投資合計額の実に五倍。その後もひと月に七千億円は買っている。目的は言うまでもなく、日本の輸出企業と競合する中国企業が人民元高で失いかけている競争力を補うこと。「中国の指導部は頭がいいからね」。
 国債への投資が政治目的ならば、日本側の円高阻止に向けた多少の努力などは中国が吸い取ってしまう。何しろ中国の外貨準備の一%分を動かすだけで、日本の経常黒字一カ月分に相当する彼我の差だ。日銀が流動性を増加させても、二〇〇四年以来やめている円売り介入を行っても、中国人民銀行がほんの少し円買いするだけで効果はゼロになる。
「ミスター・カンが慌ててハトヤマに中国へのゴマすりを頼んでいるが、うまくいくはずがないと思うよ」と冒頭・・・