洋上へ侵出したアルカーイダ
日本タンカー攻撃事件の背景
2010年9月号
大型原油タンカー「M・STAR」号(十六万トン)はアブダビのダス島で積み荷を満載し、いつものように日本を目指しホルムズ海峡を東に向け航行していた。そのタンカーを自爆攻撃したとイスラム過激主義者のサイトを通じて声明を出した「アブドラ・アッザーム旅団」とは、如何なる組織か。
その実態に迫るためには、まずアブドラ・アッザームという、「アルカーイダの父」について知らなければならない。
イラン関与には疑問符
パレスチナのジェニンに生まれ、第三次中東戦争で故郷を追われたアッザームは、ソ連軍をアフガニスタンから追い出すための聖戦に従事、同時に「アルカーイダ」の原点である「聖戦士のための事務所」を創設した。
スンニ派最高学府のアズハル大学を卒業したアッザームは極めて頭脳明晰なイスラム法学者であり、後に弟子となったオサマ・ビンラディンの浅学さを嘆いている。しかし、アッザームはサウジの富豪の出であるビンラディンの財力とビジネス人脈に着目、その才能を聖戦に捧げるよう唱導、ビンラディンもこれ・・・