あるコスモポリタンの憂国 連載43
日本と技術とイノベーション
紺野 大介(清華大学招聘教授)
2010年8月号
イノベーション(Innovation)という言葉が叫ばれて久しい。我国ではこれを「技術革新」と訳す方が多いけれど、実は誤訳である。一九五八(昭和三十三)年の経済白書がその誤訳の犯人である。この時代の日本は技術を中核とした高度成長が著しく、「技術」こそが経済発展の源泉であった。従ってこれを「技術革新」と訳しその重要性を強調したことはそれなりに理解できる。しかし二十一世紀になってもその誤訳を使っているとしたら、いささか当惑する。それは技術革新以外にも沢山の創造的な革新が有るからである。
イノベーションという語彙はラテン語のin+novus (新しい物事を採り込む)に由来しており、本来「社会に新しい価値をもたらす行為」といった意味。従って技術革新はイノベーションの一つであり、技術を革新しても、ソレが人々に新しい価値を提供しなければイノベーションとは言えない。社会科学的な管理システム、ネット販売などビジネスモデルの生成、また良質のNPOやNGOなど国家の活動を支援あるいは超越した政治的喚起も「新しい価値の創造」であり、イノベーションと呼べる。我国の民度の低下が目立つ昨今だが、日本・・・
イノベーションという語彙はラテン語のin+novus (新しい物事を採り込む)に由来しており、本来「社会に新しい価値をもたらす行為」といった意味。従って技術革新はイノベーションの一つであり、技術を革新しても、ソレが人々に新しい価値を提供しなければイノベーションとは言えない。社会科学的な管理システム、ネット販売などビジネスモデルの生成、また良質のNPOやNGOなど国家の活動を支援あるいは超越した政治的喚起も「新しい価値の創造」であり、イノベーションと呼べる。我国の民度の低下が目立つ昨今だが、日本・・・