《日本のサンクチュアリ》犯罪被害者の会
「厳罰化」に走るのは果たして健全か
2010年8月号
日本の刑事司法は近年、厳罰化の一途だ。
少年事件や交通犯罪に関する法規や刑罰は相次いで強化され、重大事件の判決も厳刑傾向が強まった。十五年で仮釈放などという“都市伝説”が語られる無期懲役刑は、ほとんど終身刑と化している。究極の刑罰である死刑はこの数年、判決数も執行数も急カーブを描いて増加してきた。
殺人などの犯罪にかかわる公訴時効は二〇〇四年に大幅延長されたばかりだったが、今年四月には「人を死亡させた罪」に関する公訴時効自体が廃止された。日本が近代化を果たした明治期から実に百三十年の長きにわたって維持してきた制度にもかかわらず、さほどの社会的関心事にもならなかった。わずか一カ月という国会審議で刑法と刑事訴訟法の関連条項が改正され、即日施行された。しかも、「憲法違反」という指摘が強かったにもかかわらず、過去の事件にも遡及適用されている。
この厳罰化傾向の原因は単純ではない。ただし、世に流布されている「治安悪化」は幻想だ。
こうした議論の際に必ず指摘されるが、凶悪犯罪や殺人事件の発生件数は戦後一貫して減少し続け・・・