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中国「労働スト問題」の深淵

「ポスト」胡錦濤も絡む

2010年8月号

 今年五月以降、在中国の日系企業で賃上げ要求のストライキが頻発、一時操業停止に追い込まれたことは、日本でも報道された。とりわけ深刻な打撃を受けたのは、系列部品工場のストで十一日間も操業停止したホンダで、大幅賃上げを余儀なくされ、五、六月の生産・販売実績も落ち込んだ。
 ストは日系企業にとどまらない。台湾、韓国、シンガポール、デンマークなど海外企業から中国の国内企業にまで、連鎖反応的に全国に広がり、終息する気配はない。中国では一九八二年の憲法改正で、スト権は条文から削除されたが、禁止する法律もなく、しばしばストは発生してきた。ただ従来は、経営側の要請を受け、地方公安当局が治安維持条例を盾に、争議に介入し労働側を弾圧するケースが少なくなく、ストは違法との誤解を生んだだけのことだ。
 しかし今回は、これまでのところ公安当局は争議に介入せず、静観している。これはネット世論が圧倒的に賃上げ要求を支持し、中央政府もストを容認する姿勢をとってきたためだ。出稼ぎ農民(農民工)の低賃金を武器に外資を呼び込んで「世界の工場」になり、高度成長を遂げてきた政策の見直しを迫られているこ・・・