大化けの可能性秘める中国「王岐山」
米国が支援する「改革派」
2010年8月号
五月下旬、真夏の陽気の北京で開かれた米中戦略・経済対話。年一回、両国が持ち回りで開く閣僚級の協議で、二国間では首脳会談に次ぐ重要な対話チャネルである。両国にとって表の目的は様々であるが、米国にはひとつ重要な裏のミッションがある。経済分野を率いる王岐山副首相とのコミュニケーション強化であり、彼への支援である。米国は「王岐山が中国を変える人物」として長らく目をつけてきたからだ。
米金融界の大物も支援
話は一九八九年六月五日に遡る。言うまでもなく世界を震撼させた天安門事件の翌日である。硝煙の臭いと騒然とした空気の残るこの日、北京の米国大使館から電話や使者によって接触を受けた中国人が数十人いた。事件によって逮捕されたり、大きな不利益を受けることが懸念された人物に対し、亡命など救いの手をさしのべたのである。民主活動家の方励之はその代表であり、彼は米国大使館の導きで米国に亡命した。
民主活動家以外に政府内で様々な民主的な改革を進めようとしていた中堅幹部も接触対象となっていた。天安門事件で失脚・・・