韓国「経済大統領」が危機に
いまや「レームダック」の様相
2010年8月号
韓国与党ハンナラ党が六月の統一地方選で大敗したことは、日本では哨戒艦沈没をめぐる大統領李明博の対北強硬姿勢に民心が不安を感じたためだと伝えられた。だが、真相は異なる。李明博が大統領任期中の完工を目指す国内四大河川の大規模改修事業が環境を破壊し国家財政に負担を強いるとの野党勢力の主張が、二〇〇八年の「ロウソクデモ」の鎮圧以降燻っていたアンチ李明博感情と結び付いたと見るのがより正確だ。
大敗北で結束が崩れたハンナラ党内からは、早くも「国民の意見を聞く姿勢を大統領が見せなければ青瓦台のレームダック化だけでなく、党もジリ貧だ」(国会議員)との懸念が出始めている。韓国国会は次の大統領選に先立つ一二年春に改選を迎えるため、議員にとっても国民の政権評価が自身の将来に直結するためだ。
本格的な「経済」大統領として登場した李明博は日本でいうところの「永田町政治」を嫌う唯我独尊タイプの指導者だが、与党との関係は小泉純一郎元首相に似ている。「党内の意見を聞かない」との不満は隠しようがなく、任期を二年余り残しながら、李明博の権力基盤は政権末期のそれに似た危うい水準にまで落ち込ん・・・