東南アジアで「軍拡スパイラル」
経済成長にブレーキがかかる
2010年8月号
中国の海軍力増強に呼応するように、東南アジア各国はここ数年、自国の軍備増強に邁進している。しかし、その「軍拡」が波紋のように広がり、近隣諸国との「競争」の様相を帯び、地域の不安定要素を増すだけの結果となっている。「疑心暗鬼」と「自縄自縛」のスパイラルに陥り、シンガポールやマレーシアといった中進国はもちろん、インドネシアやベトナムといった今後の経済成長が期待される国々の競争力を削ぐ可能性が指摘されている。
「つけ入る」兵器輸出国
かつて冷戦構造の中で東西陣営の最前線として代理戦争、武器供与の舞台となった東南アジアだが、冷戦終結とともに各国は具体的な仮想敵国を失った。それが、ここ最近の中国の海軍力増強で事情が変わってきた。
スウェーデンの「ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)」が今年三月に公表した報告は「東南アジアは向こう十~十五年、中国の海軍力増強による、軍事上の不測の事態に対処するため軍備を揃える必要がある」と分析した。しかし同時に、このことが、「東南アジア地域の不安定化と・・・