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WORLD

「EU内分裂」が本格化

「独仏枢軸」が招く不和

2010年8月号

 欧州連合(EU)において、遂に分裂の動きが始まった。今年六月三、四日に開催された閣僚理事会(法務・内務)でテーマとなっている、EU内の国際結婚した夫婦の離婚に関する法律問題において、史上初めて「協力強化」条項が発動される運びとなったのだ。十二年間封印されてきたこの「禁じ手」が発動されたことで、欧州統合はついに「EU内分裂」という新たな局面に入ることとなった。
「協力強化」条項とは、EUの立法機関である閣僚理事会の合意が達成できない場合に、本来必要な全会一致や多数決を退け、反対国を置き去りにして「先行統合」することを許容するという代物である。いわば「EU内分裂」を合法化する政治的な劇薬であるから、一九九九年発効のアムステルダム条約によって導入されて以来、これまで一度も行使されたことはなかった。議論のテーマ自体は地味ではあるが、この問題がもたらす政治的インパクトは極めて大きい。

「協力強化条項」という制度


 そもそも、「協力強化」条項の起源を探ると、「速度の異なる二つの欧州」や、「欧州中・・・