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社会・文化

「国税天下り」廃止の波紋

かえって「新利権」を生む

2010年7月号

 七月は官庁の人事異動の季節だが、国税庁では異変が起きている。
「毎年五、六月になると、職員同士の飲み会では税務署長ら幹部職の人事予想談義で盛り上がるのですが、今年は静かなものですよ」
 東京国税局管内にある中堅の税務署職員はそう話す。
 その理由は、国税庁がこれまで行っていた退職者への「顧問先斡旋」を今年七月の定期人事異動から廃止する方針を決めたからだ。
 同庁では、定年前に勇退して税理士業を始める税務署長らへ、顧問企業を斡旋してきた。「国税職員の天下り」と批判を浴びてきた制度だ。国税OBは、官僚が企業や公益法人に再就職するいわゆる「天下り」とは違うと強弁する。しかし、退職後の生活を役所が保障するという意味で、「天下り」以外のなにものでもない。
 今年は「天下り」廃止元年であり、これまで斡旋対象となってきた、税務署長や国税局の部長には、「勇退」か「継続」かの選択肢のみが与えられた。そして、そのほとんどが「継続」を選んだため、人事が停滞しているのだ。
「顧問先の斡旋もない中で、放り出されても不況で仕事もないよ」
 本・・・