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経済

《クローズ・アップ》財界の「政治局長」の異名をとる

大橋光夫(日本経団連政治委員会委員長)

2010年7月号

 日本経団連が米倉弘昌新体制への移行にタイミングを合わせるかのように、懸案だった民主党政権との「握手」に漕ぎ着けた。米倉会長が発足間もない菅直人首相に首相官邸で祝辞を述べる光景は、御手洗冨士夫前会長時代には想像ができなかった。民主党との関係修復に成功した陰には、経団連が最後の頼みの綱として全幅の信頼を寄せる大橋光夫・昭和電工相談役の存在があった。
「政治委員会委員長を続けてほしい」。五月下旬の総会を最後に経団連活動から身を引くつもりだった大橋氏を慰留したのは米倉会長本人だった。齢七十四の大橋氏を経団連がそれほど頼みにする理由は何か。一つは大橋氏の群を抜いた出自と人望だろう。大橋氏は浜口雄幸元首相の孫、父は労相や運輸相を務めた大橋武夫、さらに美智子皇后や鳩山家とも縁戚という毛並みの良さ。物腰は柔らかく、決して目立ちはしないものの、包容力に富んだ古き良き財界人の雰囲気を残す。政治委員長としての立場から経済界の重鎮らは「財界の政治局長」と呼ぶものの、御手洗前会長のような押しの強さはない。人柄から滲む信頼感が人々を惹きつけ、「あの大橋さんが言うなら」と、誰もが一目置く。
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