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経済

天然ガス「高値買い」する日本

政府の「不作為」で年二兆円が失われている

2010年7月号

 政府はことあるごとに「エネルギー安全保障」の重要性と、それがもたらす国民の利益を誇らしげに語る。しかし、十年一日のごとく硬直化したこのエネルギー政策が、実は安全保障という大義名分の裏で、無駄な巨額支出を国民や企業に強いているということを多くの人々は知らされていない。
 年間六千八百万トンと世界最大の液化天然ガス(LNG)輸入国である日本は、現在、LNGを一トン当たり五万円(CIF価格)、百万英熱量(Btu)当たり十ドルで購入している。産ガス国に対する支出総計は年間三兆五千億円に上っている。ところが、後述するシェールガスを中心とする「天然ガス革命」の結果、LNGの国際スポット価格は百万Btu当たり四ドルにまで下落した。それでありながら日本は、単純計算で百万Btu当たり六ドル、年間輸入量を掛けると二兆円以上も余計に払っている。本来はLNG価格暴落の恩恵に最もあずかれる立場であるにもかかわらず、破格の高値で買い続ける世界でもまれな「お人好し」国なのだ。
 加えて、こうした世界の「非常識」ともいえる二・五倍もの高価格でLNGを購入しているツケは、高い電気料金や都市ガ・・・