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ユーロ危機でドイツの「孤立」深まる

白眼視される「一国繁栄主義」

2010年7月号

 ユーロ危機が進行する中で、ドイツが欧州連合(EU)内でも、米欧同盟内でも孤立を深めている。その根底には、統一前の西ドイツ時代から育んできた、戦後ドイツ人の経済第一主義と平和主義があるのだから、事態は深刻だ。同じ価値観を持つ日本人にとっても、他人事ではない。
 戦後ドイツの価値観の危機は、ホルスト・ケーラー氏が五月末に突然、連邦大統領(国家元首)を辞任して鮮明になった。大統領はこの約一週間前、ラジオでこんな発言をした。
「わが国が輸出に依存している以上、緊急事態の際には、軍の(海外への)配備が必要なことも分かっていなければならない」「ある地域が不安定になれば、貿易や雇用にもマイナスの影響が出る」

各国で「ドイツ主悪論」


 大統領の慎重な言葉遣いが、かえって誤解を生んだ。緑の党など平和主義勢力は、「経済利益を守るために、軍事力が必要というのは、現代版の砲艦外交だ」と反発した。右派は逆の解釈をし、「安全保障を経済に従属させていないか」と疑問の声をあげた。
 日本通のドイ・・・