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経済

《企業研究》アサヒビール

中国・青島ビールとの「危険な関係」

2010年6月号

「幸運な船出ですね」。この三月、アサヒビールの新社長に就いた泉谷直木氏を指してマスコミは異色で強運な社長と持ち上げた。過去二十年近く営業畑出身者が代々トップに就いてきた同社の「伝統」からすると、泉谷氏は広報・宣伝や経営戦略畑を長く歩み、M&Aの専門家でもあったからだ。しかも社長交代発表のその日にキリンホールディングス(HD)とサントリーHDの経営統合構想が破談した。仮に両社の合併が実現していたならば、「スーパードライ」しか売れ筋がないアサヒは、シェア五割の統合会社によって押し潰されていた可能性が高かった。
 スーパードライは、国内のビール消費の減衰に伴い生産量は減り続けている。絶対数が減っている商品をキリン・サントリー連合軍が集中攻撃したならばスーパードライに勝ち目はなかった。しかし現実には命脈を絶たれずに済み、泉谷社長にとっての脅威も表面的には過去のものとなった。しかし一難去ったかに見える“泉谷丸”の前途にははるかに大きな難題が国内外に山積している。

「コクもキレもない」経営が続く

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