鉄鋼原料価格「暴騰」の脅威
「強欲」資源メジャーになす術なし
2010年6月号
鉄が危機に瀕している。といっても資源が欠乏するわけでも、強力な代替素材が登場したわけでもない。資源メジャーが原料の鉄鉱石、石炭を大幅に値上げするとともに、価格決定の方式を市況連動型に大転換させたからだ。鉄鋼メーカーから自動車、建設、造船など鉄のユーザー業界、最終消費者まで深刻な影響が広がろうとしている。
鉄鋼原料である鉄鉱石と原料炭はこれまで大口購入者である鉄鋼メーカー最大手と資源メジャーが非公開で交渉し、翌年度の一年間を通した価格を決定、他社はそれにならう方式だった。いわゆるチャンピオン交渉だ。大雑把に言えば、豪州のBHPビリトンやリオ・ティントとは日本の新日本製鐵と韓国のポスコが共同で交渉にあたり、ブラジルのヴァーレとは欧州に本拠を置く鉄鋼世界最大手のアルセロール・ミタルがあたっていた。
チャンピオン交渉の利点は鉄鋼需要や鉱山開発の状況などをお互いが理解し、必要な値上げ、値下げを納得して決め、安定供給を担保できた点だ。価格は一年間固定するため、鉄鋼業界だけでなく自動車などユーザー業界もコストを見通すことができ、商品の価格設定も無理なくできていた。長年・・・