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経済

険悪化するトヨタと下請けの関係

V字回復の裏で

2010年6月号

「まぁ、良かったんじゃないですか。我々から散々搾り取ったんだから」
 愛知県豊田市の自動車部品会社社長は、吐き捨てるような口調で語る。「トヨタ、二期ぶり営業黒字」。メディアは、前期四千六百十億円の赤字から一千四百七十五億円の黒字へと、予想より前倒しで「V字回復」を実現したトヨタ自動車の二〇一〇年三月期決算を、大々的に報じた。しかし、この数字は底辺で今なおもがき苦しむ下請け部品会社の悲鳴と苦悩の上に築かれていることは周知の事実だ。
「私はやっとスタートラインにつくことができたと考えております」。あっけらかんとした表情で決算を振り返る豊田章男社長には、末端で涙をのむ下請けの姿など見えているはずはない。

苛烈極める「いじめ」


「新聞に『大幅なコスト削減』と書いてありますが、具体的な取り組みを教えてください」
 今年二月、トヨタの営業黒字化見通しを報じる紙面を握り締め、ある有力部品会社幹部は、トヨタ幹部に詰め寄った。部品各社の黒字化にめどが立たない中、早々に黒字化の展望を打・・・