「EUの悲劇」は始まったばかり
「ユーロ解体」さえ視野に
2010年6月号
「最終的にはPIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)が、ユーロ圏から離脱しないと収まらない」
五月十日、最大七千五百億ユーロ(八十八兆円)の緊急融資制度と、米欧日六つの中央銀行によるドル資金供給再開が発表され、これで一・二五ドルまで下落していたユーロは一・三〇ドル台まで回復した。その時に、ある大手ヘッジファンドのマネジャーが筆者に語った発言である。「なぜ?」と聞くと、返事は明快だった。
「ソブリン・リスクを我々が今年の大テーマと考えているのは、七千五百億ユーロ程度の見せ金では阻止できないからだ。一ユーロ=一ドルという目標値は変えていない。今回のスキームは万能薬でないことを市場は見抜いているんだ」
確かにこの見方は正しかった。ユーロの対ドルレートはその後も安値を切り下げた。著者が再びこのマネジャーに聞くと、対ドルの目標値は一ドル以下に修正したとか。実際、シカゴ市場の通貨先物取引でヘッジファンドのユーロ売り越し額は過去最高記録を更新している。もっと下値を想定しているということだ。
カギ握るドイツ
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