民主党に「新農林族」誕生の兆し
口蹄疫をステップとして
2010年6月号
「まさに地獄」――五月二十日の衆議院本会議で、自民党の江藤拓議員(宮崎二区)は、涙ぐみながら地元で拡大する口蹄疫の惨状を訴えた。「牛を殺すなら、私も埋めてほしい」という老農家の話を紹介すると、本会議場は静まりかえった。一方、江藤議員に「無責任」と追及された赤松広隆・農林水産相は、ペーパーを棒読みし、苦り切った表情で事務的に答弁した。
これが象徴するように、口蹄疫騒動はいまや与野党の不毛な政争の具になり果てている。特に政権与党民主党では、これを奇貨として自らの基盤を固めようとする卑小な輩が蠢いている。
「空白県」宮崎攻略の好機
鳩山由紀夫政権は、五月十七日になって遅ればせながら対策本部をつくり、政治主導での感染拡大防止策に乗り出した。五月二十二日からは、宮崎県のうち川南町など海岸に面した東側の部分を対象に、半径十キロ圏内の牛と豚にワクチンを注射して感染力を弱め、時間を稼いだ上で全頭殺処分する「新対策」に乗り出した。健康な家畜も予防的に殺してしまう、いわば江戸時代の「火消し」と同じ手法・・・