短期連載「幻想の経済大国」中国(中)
不動産バブルという「魔物」
2010年6月号
八十五平方メートルで五千三百九十万円、百二十五平方メートルで七千万円―。
これがマンションの価格と言われれば、東京か大阪の物件と思うかもしれない。だが、前者は上海市長寧区の「仁恒河濱花園」、後者は北京市海淀区の「世紀城」というマンションの値段だ。いずれも市の中心部からはやや離れており、しかも中古物件と聞けば、値段の高さに驚く人が大半だろう。どちらもインターネットの中国不動産価格サイトで見つけた今の上海、北京のごく平均的なマンションだ。
中国の大都市中心部の不動産価格は今や日本と大差ないところまで高騰した。主要七十都市の不動産販売価格は昨年九月には前年同月比で二・九%の上昇率だったが、月を追って上昇率は高まり、今年二月以降は毎月二ケタの値上がりとなり、四月は過去最高の一二・八%の上昇を記録した。まぎれもない不動産バブルだ。
株に向かうべき資金が不動産に
言うまでもなく、中国人の所得はごく一部の富裕層を除けば日本人よりはるかに少ない。中国の一人あたり国内総生産(GDP)は・・・