存在感薄い「EU大統領」
「妥協の天才」に活路はあるか
2010年6月号
昨年発効した欧州連合(EU)の新基本条約(リスボン条約)で創設されたEU首脳会議常任議長(EU大統領)ポストに、ベルギー首相だったヘルマン・ファンロンパイ氏(六十二歳)が就任して半年たった。「ミスターEU」というふれこみのポストだが、ギリシャの財政危機が欧州を覆う難局が続くなか、同氏の存在感は極めて薄い。相変わらず「EUの仕切り役」を自任するフランス、ドイツなどの各国首脳、ブリュッセルのEU官僚組織の壁に阻まれ、オリジナリティを発揮できずにいる。
「ぎりぎりまで、私はEU大統領になることを拒み続けた。自分を候補者リストから外すよう頼んだが、最後にはもはや断れない圧力になっていたのです」
五月、フランスで発行されているキリスト教系誌に掲載されたファンロンパイ氏のインタビューが、EU本部周辺で話題になった。
決め手の言葉は、サルコジ仏大統領の「あなたはベルギーの英雄となり、(南北対立が続く)ベルギー全体があなたを誇りに思うだろう」だったという。
EUと北大西洋条約機構(NATO)という欧州二大機関の本部を抱えながら、国内では北部オランダ・・・