急増する「米国産テロリスト」
「渡航チェック」だけでは防げなくなった
2010年6月号
アメリカのオバマ政権が「国産テロリスト」の急増に頭を悩ませている。米国生まれの白人から、移民の子孫、新たに国籍を取得した者まで、「アメリカ人」が最近のテロ活動の主力に躍り出た。オバマ政権はすでに共和党から「テロ対策が生ぬるい」と批判を浴びているが、「国産テロ」対策強化には「警察国家化」の危険もはらんでいる。
ニューヨークのタイムズスクエアに爆弾が仕掛けられ、劇場街は一斉に閉鎖、観客は緊急避難─。ドラマの筋書きなら「荒唐無稽」に映る事態が、五月一日、本当に起こった。世界最大の娯楽の殿堂で、夕方、煙を出している不審車両が見つかり、周辺の複数の劇場、マリオット・マーキスホテルの宿泊客数千人が屋外に誘導され、一帯は翌朝まで閉鎖された。二〇〇一年九月の同時テロ事件以後、大概のことには慣れたニューヨークっ子にも、世界最高の歓楽街が封鎖される事態は初めての光景だ。
まる二日後、ファイサル・シャザド容疑者が、ケネディ国際空港で離陸直前だったエミレーツ航空機から降ろされ、逮捕された。イスラム教徒の名前に、多くの米国人は「やはりそうか」と感じたが、詳報が入るにつれ、急速に不・・・