「電子書籍元年」に呑気な出版業界
座して死を待つのか
2010年5月号
最近書店では、「電子書籍」に関する本や、雑誌の特集が溢れている。発売間近の「iPad(アイパッド)」(アップル)や上陸が近づく日本語版「キンドル」(アマゾン・ドット・コム)がきっかけだ。「電子書籍元年」といわれるが、当事者である出版業界の危機意識は限りなく低い。このままいくと業界の既存会社は淘汰の憂き目に遭う。
当事者に危機感なし
四月十二日に発売された『週刊ダイヤモンド』(四月十七日号)の記事差し替えが、出版業界で話題となった。掲載予定だった「電子書籍と出版業界」という六十ページの特集記事が直前に別の記事へと変更されたのだが、その理由について様々な情報が駆け巡った。
「電子書籍の普及や、影響を受ける再販制度など現状の流通機構についても触れていて、『取次圧力説』が流れたのは確か」(大手出版社営業担当)だ。しかし、取次の「言論」に対する意識は高く、ありえない話だという。結論を言えばこの「圧力説」は、取次の存在を過大に評価する業界に流れた風説でしかなかった。
問題は、このよ・・・