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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》厚労省「薬系技官」

薬害はまた起こる

2010年5月号

 世界各国ですでに使える薬が日本では使えないまま長期に晒される問題、いわゆる「ドラッグ・ラグ」は依然として深刻である。医薬産業政策研究所によれば、二〇〇八年時点で、海外で使われている新薬が日本で承認されるまで平均で約四年も待たねばならない。
 癌や難病に苦しむ患者にとってドラッグ・ラグは文字通りの死活問題。こうした国民の命に関わる医薬品などの審査・承認において、生殺与奪の権限を一手にする厚労省の技術官僚が「薬系技官」だ。かけがえのない命が救われるチャンスを、ただ組織の論理で不当に逸しているとすれば、これを人災と呼ばずして何と言えよう。

海外逃避始めた国内製薬企業


 薬事行政を支配する薬系技官は厚労省のキャリア官僚である。その数およそ五百人。医薬食品局という部署に巣食い、強大な許認可権限を握る。薬事行政と薬系技官の関係は、小誌〇九年四月号で詳述した同省医政局・保険局を根城とする「医系技官」の存在をイメージするとわかりやすい。
 薬系技官は、大学薬学部を卒業後、そのまま霞が関に「・・・