《企業研究》富士フイルム
華麗なる業態転換の正念場
2010年5月号
これほど事業内容が様変わりした企業も珍しい。かつて銀塩フィルムで圧倒的なシェアを握っていた富士フイルムは、液晶パネル向け薄膜材料やCCDなどの光学デバイスを主力とする電子材料・部品メーカーへと姿を変えて久しい。銀塩フィルム市場の急速な衰退という逆境の中で、保有技術を生かした巧みな「業態転換」を成し遂げ、消えていったライバルを尻目に、見事に生き延びている同社。その矜持は、社員がかねてマスコミ関係者らに自負してきた「化学業界トップは三菱ではなく、実はウチ」という言葉によく表れている。
その彼らが今、電子産業の環境激変などを背景に、再びの「業態転換」に挑戦している。目指すは「総合医薬品会社」への飛躍である。保有技術の応用という趣であったかつての「業態転換」との違いを意識してか、今回は「第二の創業」との意気込みだ。創業七十六年の歴史において実質二度目の「業態転換」に挑むこと自体、他に例を見ない異色の企業であることは確かだ。
同社が実力社長である古森重隆氏のもと、「第二の創業」を掲げたのが、中期経営計画「VISION75」(二〇〇四~〇八年度)においてだ。いわば、・・・