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経済

《クローズ・アップ》藤本勝司(日本板硝子社長)

外国人トップの起用続ける

2010年5月号

 日本板硝子は米化学大手デュポン出身のクレイグ・ネイラー氏(六十一歳)を新社長として招聘することを決めた。子会社の英ピルキントンから抜擢したスチュアート・チェンバース社長(五十三歳)の突然の辞任から半年で経営体制はようやく正常化し、会長から復帰していた藤本勝司社長は再度、会長に退く。だが、今回も外国人トップを求めざるを得なかった日本板硝子のグローバル企業への道のりはなお険しい。
 日本板硝子がピルキントンを買収したのは二〇〇六年六月。当時は国内二位とはいえ世界シェアは六位にすぎず、世界トップの旭硝子との距離は大きく離れていた。しかも旭硝子が液晶用基板ガラスで高収益路線を快走していたのに対し、日本板硝子は建材用、自動車用が主体で収益力、成長性にも疑問が持たれていた。当時の出原洋三会長、藤本社長が旭硝子追撃のために行った乾坤一擲の大勝負が世界三位のピルキントンの買収だった。日本板硝子は一気に世界二位に浮上、しかもピルキントンは欧州だけでなく、需要が急増する中国、インド、南米など新興国、途上国に強い基盤を持っており、狙いは見事にあたったかにみえた。
 だが、大きな落とし穴・・・