中国は本当に経済大国になったのか─。口には出さないが多くの日本人はこの疑問をぬぐい切れていない。成長率、外貨準備高、自動車販売台数、株式時価総額など経済大国を裏付ける指標には事欠かない。二〇〇八年の北京五輪、五月に開幕する上海万博も発展を世界に誇示する。だが、出稼ぎ農民の過酷な労働実態や内陸農村の窮状、国際競争力のない国有企業群、不正・腐敗の横行などをみれば、経済大国のイメージはにわかに色あせる。
　それを「沿海と内陸の格差」や「発展過程の矛盾」と説明するのは問題の矮小化でしかない。今の中国は中国共産党が自らのために創り上げた内実の伴わない「幻想の経済大国」だからだ。その実態と危うさを今月から三回にわたって報告する。

無意味な投資で景気を刺激

　中国中部沿海部に位置する江蘇省。上海市の後背地として外資の工場が多数進出しているが、今も広大な水田が広がる農業地帯でもある。そのほぼ中央で、上海から車で三時間はかかる一農村に今、七十四階建て三百二十八メートルの超高層ビルが六月の完・・・