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連載

還りのいのち 還りの医療 自然死への道を求めて 連載 42

延命中止と死期
米沢 慧(評論家)

2010年4月号

 昨年暮れに、延命中止、ことに呼吸器外しといった終末期医療にかかわる裁判で一つは有罪確定、もう一つは不起訴という結果がでた。これらは高度医療が前提となった病院(施設医療)の終末期を患者・家族・医療従事者がどう関わるべきかを問いなおす標になるとおもわれる。その相違をとりあげてみたい。
 有罪が確定したのは川崎協同病院・患者窒息死事件(一九九八年)。
 当時呼吸器内科部長だったS医師が気管支ぜんそくの重症発作で入院中の男性患者(当時五八歳)に対し、気管内チューブを抜き取り、さらに准看護師に命じて筋弛緩剤三アンプルを静脈注射させ、呼吸筋弛緩に基づく窒息により死亡させたとして二〇〇二年に殺人罪で起訴され、〇五年横浜地裁は懲役三年、執行猶予五年。その後、東京高裁は「治療中止について法的規範も医療倫理も確立されていない状況の下で家族からの要請に決断を迫られたものであり事後に非難するのは酷である」として一審を破棄、減刑(懲役一年六カ月、執行猶予三年)した(〇七年)。そして最高裁はS被告の上告を棄却する決定をし二審判決が確定した(〇九年一二月)。延命治療をめぐる医師の行為の刑事責任・・・