一千億円「抗うつ薬市場」の異常
医師が患者をつくっている
2010年4月号
医師による「うつ病患者」の濫造が止まらない。本来であればうつ病とは言えない状態の人間まで「うつ病」とされ、さらには、安易な治療薬処方で製薬会社が儲ける構図もできている。
日本国内でうつ病と診断された患者は二〇〇八年に初めて百万人の大台を突破した。最近の特徴として、うつ病の典型であるメランコリー型とは異なる、現代型、新型とも称される非定型うつ病が増加している。
うつ病の概念が拡大した背景に、一九八〇年に米国精神医学会が発表した『精神疾患の分類と診断の手引 第三版(DSM‐?)』の存在がある。これは、うつ病に関連する症状を九項目挙げ、基本的にこのうち五項目以上が二週間続けば、うつ病と診断するもの。日本でも「科学的診断」として広がった。現在は改良バージョンのDSM‐?が用いられている。
DSM‐?以前は、「うつ病とは何か」といった哲学的レベルから出発し、患者の性格を考えながら個別的に診断・治療するのが主流だった。だが、医師の主観や技量が入り込む余地があるため、診断そのものに混乱が生じる面もあった。しかしDSM‐?を使うことで、症状とその持続期間以外・・・