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経済

「独り勝ち」NTTドコモに秋風

通信市場は端末メーカー主導の時代へ

2010年4月号

 自らパンドラの箱を開けたようなものだ。
 一月二十九日、NTTドコモの二〇〇九年四~十二月期決算記者会見。「米アップルが三月末に日本で発売するiPad(アイパッド)に通信カードを提供する考えがあるのか」と記者から問われると、山田隆持社長は一瞬当惑したような表情を見せたあと、「まだ決めたわけではないが、前向きに取り組みたい」と返答した。iPadの発売は四月末。まだ時間があり、おそらく想定しなかった質問だったのに違いない。
 なぜならドコモにとって、iPad向けにID入りICカード「SIMカード」を提供するという事態は、日本の携帯電話会社トップとして簡単に認めていいものではないからだ。むしろそれは、携帯キャリアというヒエラルキーのトップにありながら、「日本の携帯電話産業の崩壊を携帯キャリア自らが認めたようなもの」(携帯電話メーカー幹部)といえる。

崩れる顧客の囲い込み


 SIMカードとは、携帯電話に差し込まれているICカードで、利用者の契約内容や電話番号を識別して通信を可能にす・・・