金融界が富士通に背を向け始めた
屋台骨揺るがすドル箱事業喪失の危機
2010年4月号
富士通の間塚道義・会長兼社長(現会長)は三月上旬、ユーザーである地方銀行上位行に自ら出向き、野副州旦元社長の解任問題について事情説明に奔走していた。
「今回はいろいろとお騒がせいたしまして、と謝罪訪問の連絡が入った。その後『一席いかがですか』と勧められたが、経緯の説明だけならと遠慮した。年度末も近づいていて、杯を酌み交わす時期じゃない。それに、世間を騒がしておいて一杯やろうもないだろう。どういう神経しているのかね」
応対した地銀役員は呆れたようにこう話す。
金融業界は、富士通が起こした今回の騒動について、実に冷ややかな見方をしている。銀行にとって基幹系システムの入れ替えは、短時日ではできない。依然として金融不況から脱していない現状で、管理・保守目的以外のシステム投資は現実的に難しい状況だ。
しかし日本を代表するIT企業である富士通で起きた前代未聞の不始末が明るみに出たいま、ユーザー銀行の間には「この会社、ちょっと変だな、大丈夫か?」という疑念が確実に広がっている。すぐに取引に変化はなくてもIT基盤は一年、二年で陳腐化していく。五年先・・・