《企業研究》日立製作所
漂流する「老朽巨艦」
2010年4月号
今年、創業百年を迎える日立製作所。「冷蔵庫から原発まで」を標榜し国内総合電機の雄として業界に君臨したのも今は昔。二〇〇九年三月期で製造業としては過去最大の赤字を計上し、一〇年三月期こそ事業構造改革コストの減少などで赤字圧縮に一定の成果を収めたものの、「老朽巨艦」に危機が去ったわけではない。
同社をめぐっては昨年四月、未曾有の赤字計上を前に急遽、本体を離れ日立マクセルの会長に就いていた川村隆を社長に迎えるというサプライズ人事を断行した。だが、業績は上向かず、昨年十一月の公募増資も計画未達に終わるなど、出戻り社長の限界が露呈した。そこで今度は、本社副社長の中西宏明を四月一日付で「日立丸」の新たな艦長に就けるという慌ただしい展開となっている。
日立の社長は歴代、任期十年という長期政権を敷くのが通例であり、わずか二年余りの間に三人の社長が会社を牽引することなど、戦後の混乱期を含めて一度もなかった。まさに日立の漂流を物語る象徴的な事例であろう。
新社長の中西を待ち受ける仕事は、それだけに多い。過去数代の社長が途中で匙を投げたグループ構造改革を完遂し、低・・・