「中国VSグーグル問題」の核心
米中「サイバー覇権戦争」の先駆け
2010年4月号
グーグルが中国から撤退した。二〇〇六年に中国に進出したインターネット検索の最大手企業が、ネットユーザー四億人近い中国市場を放棄するに至った事情は複雑だ。そこには米中政府の思惑や価値観の違いだけでなく、中国の国内情勢も絡んでいた。
撤退劇は今年一月十二日、グーグル本社の声明から始まった。声明は、グーグル利用者に対する中国国内からの頻繁なサイバー攻撃を受けた事実を挙げると同時に、中国当局から課せられた自主検閲の中止を表明、撤退も辞さない方針を打ち出した。ユーザーの保護と表現の自由を確保するとして中国に挑んだグーグルには欧米諸国から強い支持が集まった。
特にヒラリー・クリントン米国務長官は、ネット検閲は、言論の自由を保障した世界人権宣言に反するとしてグーグル支援を明言、一時は米世論や議会も中国批判一色になった。米政府内からは世界貿易機関(WTO)への提訴論まで飛び出し、昨年末以降、さまざまな摩擦が顕在化した米中関係に新たな火種が加わったかに見えた。
二月中旬、中国政府の高官筋は、「グーグルの意図がわからない」と話した。グーグルが異議を申し立てた検閲・・・