「クロマグロ」でEUが敗れた理由
「寄せ集め国家集団」が抱える難題
2010年4月号
大西洋・地中海クロマグロの国際取引を禁止しようとする欧州連合(EU)、モナコの提案が、三月、カタール・ドーハで開かれたワシントン条約締約国会議で否決された。世界のクロマグロの八割を消費する日本政府は胸をなで下ろしたが、EUにとっては、昨年末、気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)に続いての惨敗だ。「世界の環境政策のリーダー」としてのEUは、もう終わりなのか。
本質論とかけ離れた各国のエゴ
途上国から見ると、EU提案はいかにもご都合主義だった。
大西洋クロマグロをワシントン条約の「絶滅危惧種」に指定すると昨年提案したのは、地中海沿岸の小国モナコだった。世界自然保護基金(WWF)などの有力環境NGOが実力者に食い込んでおり、王室外交で理解を広げた。
距離的にも歴史的にもモナコに近いEUは、モナコ提案の修正案を提出。クロマグロ禁輸では同調しつつ、この秋報告される最新の資源状況報告をふまえ、締約国会議の常任委員会に発効の最終判断をさせるというもの。発効の時期は来年五月に先・・・