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アフガンに流れる「奇妙な気配」

関係者合意の「出来レース」か

2010年4月号

 アフガニスタンのアヘン栽培地帯マルジャで始まったタリバン掃討作戦は、間もなく五十日目を迎える。国際治安支援部隊(ISAF)の中にアフガン軍も加わった今回の合同作戦は、間もなく主戦場をタリバンの金城湯池カンダハルに移す。
 その戦いでは、タリバンとの熾烈な市街戦が予想され、米英軍に多数の犠牲者が出ると懸念する見方が強い。

逮捕ではなく「投降」


 しかし、ここにきてアフガン情勢を左右する主役や脇役達の言動に、従来とは異なる「奇妙な気配」が流れ始めた。すなわちイラク、パレスチナのような泥沼状態にはまり込むとの悲観論が後退し、場合によっては撤退時期が早まる、とする楽観的な観測さえ出始めたのだ。その背景には、いかなる事態が起きているのか。
「奇妙な気配」の始まりは米国首脳の言動が発端だった。マルジャ作戦では、予想されたタリバン側の激しい抵抗は見られなかった。海兵隊員ら十数名が死亡したが、「多数の死傷者で仮設病院が埋まる」という事態は起きなかった。前線状況を視察したゲーツ国防長官は三月・・・