EU「成長戦略」が無残な結果に
国際社会で「二軍落ち」の危機
2010年4月号
「世界一競争力があり、世界一ダイナミックな知識基盤の経済圏を十年後に実現する」
大風呂敷を広げて二〇〇〇年に始まったEUの十カ年成長戦略「リスボン戦略」は、終わってみれば目も当てられない惨憺たる内容で、竜頭蛇尾の誹りを免れない。経済のダイナミズムをつけるために就業率七〇%、研究開発費の対GDP比三%を目標としたが、結果は前者が六五%弱、後者は二%弱で、いずれも米国はおろか、日本にさえ負けている。年三%を目標とした経済成長率に至っては、〇八年が〇・八%、〇九年がマイナス四・一%(推計値)と論外の数字だ。公共財政の再建によるユーロ体制の強化も目指したが、〇八年の金融危機対策で各国の積み重ねた財政再建努力は一気に吹き飛び、PIIGS(ポルトガル・イタリア・アイルランド・ギリシャ・スペイン)の累積債務がユーロ体制の存続すら脅かしかねない体たらくである。
野心に欠ける目標値
一体何が悪かったのだろうか。欧州委員会が二月に公表した「リスボン戦略の評価」は、戦略をガバナンスする体制の未熟さを反省・・・