NATOが模索する「存続理由」
「地域軍事機構」からどう脱皮するか
2010年4月号
冷戦終結から二十年を経て、北大西洋条約機構(NATO、二十八カ国加盟)はその安全保障観の変革に躍起になっている。今年十一月、ポルトガル・リスボンで開くNATO首脳会議は、行動指針になる新戦略概念を採択する。眼目は、世界全体を舞台にした活動展開の正当化だ。アフガニスタンへの軍事介入収拾、欧州配備の戦術核撤去の課題を抱えながら、NATOは地域軍事機構から脱皮する道を進み始めた。車の両輪であるべき欧州と米国との連携の将来を占う局面になるだろう。
中露が警戒する「新戦略概念」
敵がいなくなった軍事同盟―冷戦後のNATOの姿だ。一九九一年七月、ソ連を盟主とするワルシャワ条約機構は正式解散し、同年十二月にソ連自体が崩壊した。軍事同盟は仮想敵の国や国家群に対抗するため形成され、同盟国間の軍事支援を与える。大敵・ソ連の消滅後、同盟の大義を民族紛争、テロリズム、「ならず者国家」など新たな脅威に振り向け、NATO不要論は退けられてきた。NATO軍の派遣は、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、アフガニスタンへと加盟・・・