米国は衰退していない
相対的影響力が低下しただけ
2010年4月号特別リポート
米国が絶対的に衰退するとの意見はさすがに少なくなってきたが、相対的衰退傾向は否定できないし、米国が広げ放題に手を付けた世界的な関わり合い(コミットメント)を整理する新孤立主義に向かい始めたとの見方も可能だろう。いずれにしても、「衰退」とか「崩壊」と騒いでみても、言葉の定義が必要だし、どれくらいのタイムスパンで観察するかをはっきりさせなければならない。
英国防省の開発・概念・ドクトリンセンター(DCDC)研究チームがこのほどまとめた「世界的戦略の諸傾向――二〇四〇年まで」と題する報告書は、今後三十年の間に大国の焦点はこれまでの米国や欧州からアジアへ移行し、その間に米国の覇権的力は色あせていくだろうが、圧倒的な軍事力だけは引き続き維持されるだろうと予想した。新たな舞台に登場した中国やあとに続くインド、さらに冷戦時の主役だったロシアはどのような役割を演ずるのだろうか。大国間の思惑を秘めたゲームはすでに始まっている。
財政・金融面からの危機はある
大国間の治乱興廃を論じたのはDCDC報告・・・