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連載

むかし女ありけり 連載 115

辞世
福本 邦雄

2010年3月号

氷よりさらに儚く地の上に消ゆるいのちのおもしろきかな 茅野雅子

 明治三十八(一九〇五)年、本郷書院から、与謝野晶子・山川登美子・増田雅子の共著歌集『恋衣』が出版された。中沢弘光の美麗な装丁で本文一五四ページからなる三六判、細長い形の仮綴紙装の本である。扉には「詩人薄田泣菫の君に捧げまつる」という献辞があり、『明星』に早くから新作を寄せ、すでに詩壇の第一人者となっていた泣菫に対し、三人の女流歌人は敬慕の情をもってこの歌集を捧げている。
 内容は、雅子の「みをつくし」一一四首、登美子の「白百合」一三一首、晶子の「曙染」一四八首に、更に晶子の詩「君死にたまふこと勿れ」以下六編からなっている。
 文芸評論家の生田長江は、「雅子女史の歌には登美子女史の作のごとく熱烈な感情の代りに落着きのある円熟した格調と情懐とが他にすぐれて慕しい特徴をなす。晶子女史のごとき奔放な想像の翼を欠く代りに着想の中にもいかにも優しい女性らしいところがあり、そこに情怨にして優婉な所以をよく示してひろく短歌界に独歩の境地を有していられる」と褒めちぎっている。三人の中ではまだ一番新・・・