産業界を「一変」させる電気自動車
トヨタが「下請け」に転落する可能性も
2010年2月号
環境意識の高まりの中で電気自動車(EV)が注目されているが、このEVはこれまでの産業構造を激変させる「劇薬」でもある。新産業の創出を否定するわけではないが、根拠の怪しげなエコブームに乗ってEVを礼賛していると、日本の産業界は大きなしっぺ返しを食らうリスクも潜んでいる。
EVは汎用部品の組み合わせで生産できる車だ。複雑な精密加工が必要なエンジンやAT(オートマチック・トランスミッション)も不要。極論すれば、中国製の安価なモーターと蓄電池などを寄せ集めで購入しても組み立てることができる。メカに詳しい人が秋葉原などで部品を買い集めてパソコンを造るのと同じイメージだ。
主導権は部品メーカーに
実はEVが注目されるのは、約百年ぶりのことだ。一八八六年にダイムラー・ベンツの元の会社がガソリンエンジンを発明し、一九二〇年頃までに今の自動車の構造がほぼ完成。一方でEVはすでにガソリンエンジンの登場前の一九世紀前半に試作されていた。一九世紀後半は、ガソリン車、EV、蒸気自動車が並立していた。{br・・・