中国に喰い荒らされるASEAN
FTAがもたらす副作用
2010年2月号
「自由貿易協定(FTA)」。すっかり市民権を得たこの単語は、経済停滞を打開する万能薬のように語られているが、果たしてそうであろうか。ある国とFTAを締結すれば、何らかのメリットはある。しかし実際は、それ以上に自らにも大きな痛みが伴う場合も多い。わかりやすい具体例は、今年一月一日にスタートした東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国のACFTAだろう。
日本貿易振興機構(JETRO)によれば、世界で発効しているFTA(二〇〇九年五月時点)は百二十件。合意済み四十件、交渉中は六十四件。そして年初、東アジア域内にFTAによる自由貿易圏が誕生した。
一五年までに経済統合を目指すASEANのタイやインドネシアなど主要六カ国は関税をほぼ撤廃、中国とのACFTAを発効させ、人口十九億人規模の巨大な自由貿易圏を誕生させたのである。
日本でもこの事実は、中国が年度内に国内総生産(GDP)で日本を抜く見通しであることと合わせ、正月早々メディアによって報じられた。多くは日本経済の「没落」や「取り残される」という文脈で語られていた。
本当にそうなのだろうか。・・・