米・パキスタンの溝深まる
対アフガン戦略は崩壊の危機に
2010年2月号
「アフガンの戦いには、パキスタンという第二の劇場がある」と述べたのはオバマ大統領だった。第二劇場での芝居が、当初の筋書き通りに演じられなければ、テロとの戦いは決して成功しない、という意味だ。だが劇場を提供するパキスタンと、芝居の主役を演じる米国との間で、昨年暮れから、不協和音が増幅し始めている。
双方の溝が顕在化し始めたのは、昨年春、オバマ大統領によるアフガン新戦略が発表され、その中で、「アフガンの戦いには、パキスタンの協力が不可欠である」とパキスタンの重要性に言及してからだ。米国のメッセージは、それまでテロ対策に不熱心だったパキスタンの覚醒を促し、加えてテロ組織の壊滅に全力を挙げるよう要請する内容だったからだ。
これに対して、ザルダリ大統領をはじめ、政府首脳や軍部は、オバマ戦略の文言の中に「米国の圧力」を肌で感じたようだ。年が明けると、早々にクレシ外相までもが「わが国が何をなすべきか、米国には指図してもらいたくない」と感情的な表現を使って米国を批判した。おそらく両国の対立を密かに喜んでいるのは、武装ゲリラ組織タリバンとアルカーイダではないか。