ドイツを覆う「アフガン厭戦論」
「引き籠もり」始まった政府と軍
2010年2月号
クンドゥス──。ほとんどのドイツ人に縁もゆかりもない、アフガニスタン北部の地名が、ドイツ政界を揺るがしている。それどころか、ドイツが第二次世界大戦後にこつこつと築き上げてきた国際的地位さえ、脅かしている。
この地名が突然有名になったのは、二〇〇九年九月四日のことだ。
クンドゥス展開中のドイツ連邦軍のゲオルグ・クライン大佐は、選択を迫られていた。北大西洋条約機構(NATO)軍部隊用の燃料を運んでいたトラック二台が、タリバンに乗っ取られた、という情報が入ったのだ。米軍が空から確認し、戦闘爆撃機が出動して、クライン大佐の指令を待った。「トラックを爆破すべきか否か」。
クライン大佐には別の情報も入った。「アフガニスタン人情報員が『タリバンによる乗っ取り』を確認した」。同僚の情報担当者がもたらした。
「攻撃だ」。クライン大佐の指令に、F15戦闘爆撃機はただちに応じた。燃料トラックは火柱を立てて燃え上がった。
次に入った情報は、クライン大佐ばかりか、連邦軍首脳を震撼させた。多数の民間人死者が出た、という。タリバンの乗っ取り後、燃料を分・・・