看板倒れの「サイエンスリンケージ」
「科学技術立国」の舞台裏
2010年1月号
「実にいい『役者』を仕込んだな」――。ある経済官庁幹部は文部科学省を羨んだ。役者とは誰か。そう、あの「ノーベル賞・五人衆」だ。行政刷新会議による事業仕分けで次世代スーパーコンピューターやGXロケットといった科学技術関連予算が次々に廃止・凍結を求められたのを受け、利根川進氏や江崎玲於奈氏らが急遽会見。事業仕分けを強く批判したのは記憶に新しい。「科学技術の将来に取り返しのつかない状況を引き起こす」「(現政権は)科学技術立国と逆の方向を向いている」と口々に不満を爆発させた知の権威の姿は、世論の「やりすぎ批判」を誘導。結果、文科省が切望したスパコン開発は予算復活を果たした。
だが待ってほしい。本当に日本は科学技術立国なのか。確かに二十世紀の日本経済は優れた「技術力」が牽引したが、それは自動車や電機といった産業界の頑張りがあってこそ。大学や研究機関がどれほど産業界に貢献してきたのか。冷静に分析してみると、お寒いばかりの現実が見えてくる。
日米間で八倍の開き
「サイエンスリンケージ」という言葉が・・・