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目に余る非常勤行政委員の高待遇 注目される滋賀県の裁判
2010年1月号公開
今月末、大阪高裁で全国の自治体が固唾を呑んで見守る裁判が結審する。滋賀県が非常勤の行政委員に多額の月額報酬を支払っている事の是非をめぐる裁判だ。非常勤の行政委員とは選挙管理委員、労働委員、公安委員、教育委員などで、多くが弁護士などの有識者、労組の幹部、それに議員のOB。こうした委員に多額の報酬が月額で支払われている。
裁判の過程で明らかになったのは週に二回、三十分ほど会議に出れば月約二十万円の報酬がもらえるという驚愕の事実だ。ほぼ全ての自治体で同じような事が行われているという。総務省に提出された資料によると最も高い東京都は月額約五十万円。赤字の大阪府でさえ三十万円前後を支払っている。なぜこんな事が許されるのか。地方自治法では非常勤委員の給与は日額で支払う事とされている。ところが同法には例外規定が設けられており、条例で定めれば月額報酬にしてよいとなっている。そして驚くべき事に、全ての自治体が特別な条例を制定してむやみに高い月酬を支払い続けているのだ。
選挙管理委員は選挙がなければ業務はない。労働委員も不当労働行為等の問題が生じなければ業務はない。大阪府が明らかにした数字でも去年一年間の勤務日数は、選挙管理委員で三十三日しかなかった。滋賀県を訴えた裁判で原告の吉原稔弁護士は「委員の多くは議員のOBと組合の幹部。完全な天下り先になっている」と憤る。
一部で見直しの動きも出始めており、神奈川県と新潟県では原則、月額報酬をやめる方針を打ち出している。しかし、他の自治体の多くはだんまりを決め込んだままだ。ハローワークに仕事を求めて若者や中高年が列を作る時代に、こんな無駄遣いが許されてよいはずがない。
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