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目玉の官民ロケット開発中止で事業計画の甘さをさらすIHI

2010年1月号公開

 


 民主党政権が実施した行政刷新会議による事業仕分けの余波が、IHIを大きく揺さぶっている。同社が全面的に肩入れしてきた官民共同の中型ロケット開発プロジェクト「GX開発計画」に「廃止すべき」との判定が下されたうえ、十二月中旬に内閣官房の宇宙開発戦略本部が「計画自体を取りやめる」として、正式にお蔵入りを決めてしまったためだ。

 二〇〇二年から開始されたGX計画は当初三年とされた開発期間が遅れに遅れ、四百五十億円と目された開発費も膨らむばかり。これまでに三百億円の血税を含む七百億円を投じたにもかかわらず、試験機打ち上げにさえメドが立っていない。最終的な開発費は二千百億円にのぼるとの試算もあっただけに、刷新会議の判定はいわば「当然と言えば当然」(事情通)だった。しかしIHIはこれに激しく噛みつき、政府に反論文書まで提出し、事業継続を要求する行動に打って出た。

 実はIHIは十一月初旬に公表した一〇年度から三年間の中期計画でロケットシステムをコア事業の一つと位置付けたばかり。なかでもGXは目玉としていただけに「あまりの間の悪さに周章狼狽し、引っ込みがつかなくなった」(三菱重工業関係者)のだろう。内部からは「経営陣の見通しの甘さを満天下にさらけだしたようなもの」といった自嘲も漏れる。


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