「持たざる経営」忘れたトヨタ
いつの間にやら借金十二兆円
2010年1月号
トヨタ自動車は経営面で過去に数々の「神話」を残してきた。その最たるものが、「社内外に発言したことは到底無理なことでも成し遂げる」という不屈の姿勢だ。この積み重ねが「トヨタの経営は凄い」という伝説を作ってきた。「コストは半分、性能は二倍に上げろ」。部品メーカーが唖然とする苛斂誅求な要求を外から見る限りでは平然と実現した。社内の隅々まで点検し、仕事のやり方などすべて真っさらに戻してカイゼンする――そんな「打倒トヨタ運動」もしれっと貫徹した。「言ったことはやり遂げる」。それがトヨタ経営の真骨頂だった。しかし、今のトヨタはその「神話」が過去の伝説に堕してしまったようだ。
二〇〇八年末。リーマン・ショックで赤字に転落することが現実となった時期、トヨタのある経営幹部は真剣な表情でこう述べた。
「トヨタは拡大、拡大で、知らず知らずのうちに構えが大きくなってしまった。聖域をつくらないカイゼンがこれからの仕事になる」
さすが隙のない発言で、その時はトヨタが本気で徹底した経営のカイゼンに取り組む気概を痛感した。本来、トヨタのカイゼンには凄まじい破壊力がある。住宅事・・・