「金正日・北朝鮮総書記の後継者として有力視される三男ジョンウン氏が今年六月に秘密裏に訪中し、胡錦濤・国家主席と会談していたことが明らかになった」。二〇〇九年十二月四日朝のＮＨＫニュースは、瞬く間に日本だけでなく中国にも伝わった。
　日本や韓国の大使館、メディア界が受けた衝撃は、単にスクープめいた報道だったからではない。重苦しい半年間を振り返り「北朝鮮問題の新ラウンドがついに始まったか」という思いにかられたからだ。
「ジョンウン訪中」は、朝日新聞が六月十六日付の北京発で一面トップで報じた。しかし、中国当局は事実を否定した。日本や中国の大多数のメディアは追随せず、誤報扱いした社もあった。
　中国外交部の秦剛・副報道局長は、週二回行われる記者会見で、ジョンウン報道について少なくとも四回言及している。「承知していない」「報道された事実は存在しない」「まるで００７の小説を読んでいるようだ」。六月二十九日に英フィナンシャル・タイムズ紙が「ジョンウン氏はやはり訪中していた」と報じた翌日も秦氏は「根拠がない」と一蹴した。
　秦氏の発言録を克明に読めば、朝日・・・